DIYでYAMAHA FG180をリペア

 YAMAHA FG180を購入し自分でリペアした記録です。リンク先は私が購入し使用した機材になります。おかしなところもあるかと思いますが、DIYされる方の何かの参考になればと。

ネックリセット
前回の記事にあるように素人では難易度の高いネックリセットが完了しました。

リフレット
ネックリセットを行っている間に全部のフレットを抜き、ステンレスフレットを新たに打ち込みます。今まで黒檀指板を扱ってきましたがローズウッド指板はあまりフレット抜きで荒れることなく作業がやりやすかったです。フレットを打ちこむ前に指板のアールをマーチンと同じアールにすべくサンディングブロックに紙やすりを巻いて均します。このオールドヤマハはどちらかというとクラシックギターのように平坦でカーブがあまりついてないんですよね。弾きにくいギターだったと思います。素人でも今回3度目のフレット打ちでしたが慣れてくると簡単に済みました。

Musiclily Pro 2.0mmステンレススチール小さいゲージバンジョーとビンテージフェンダーギター 用フレット(24本セット)

百均で買った二つのハンマーを使いました

ペグの交換
ペグにがたつきがあるため交換することにしました。キクタニのウェーバリータイプのペグが良さそうだったので取り寄せました。

キクタニのペグに交換
台湾で作らせているようですが、仕上げが丁寧で見た目にも中々良い感じです。サイズもネジ穴の位置もほとんど同じでした。ただしキクタニはヤマハよりブッシュが小さめですのでそのまま使うと穴の中でブカブカです。エポキシパテで隙間を埋めてブッシュを固定しました。

キクタニ ギター ペグ オープンバックタイプ 右3+左3 1セット GM-WN3 ニッケル

ナット・サドル形成
ナット作成が最も大変な作業の一つかと思いますが、専用のヤスリを使う必要があります。高いので買うのにためらいがありましたが、一度買ってしまうと使う頻度も高くなり必須の工具だなと思います。100番以下の目の粗い紙やすりでサイズを合わせてミニ万力に挟んで細かい仕上げをします。オールドヤマハはナット幅が44mmほどあるのですが、弦間のピッチの取り方がマーチンと異なり独自仕様で中央に狭いピッチで寄せて溝を切ってあります。そのためネックは太めなのに弦間が狭いという特徴があり、ストロークプレイにはよいものの、指弾き用としては弾きにくい仕様です。そこで新たにナットを形成する時には溝切のピッチはマーチン用に切る必要があります。ただしオールドヤマハはネックの幅が現在のギターのようにハイフレットになる程幅が太くなることはなく全体的に細いネックになっています。

オリジナルのナットの溝切

作業の前に弦間ピッチの切り直しで本当にそれで弾けるのか考える必要があります。通常のマーチンと同じピッチにナットとサドルを合わせてしまうと、オールドヤマハはネックが細いため1弦と6弦とネックの端との距離が短くなり、押し弦中に力加減を誤ると弦がネックから落ちて嫌なサウンドを出してしまいやすくなります。自分の演奏で問題がないかを何度も確認しました。

ナットの弦高調整
ナットの弦高はぎりぎり落とした方がプレイアビリティの向上につながります。1フレットの高さと同じになるくらいにナットの溝を掘り、完全にくっついた状態にしてから1フレットを削り音が出るまで隙間を作るようにするとかなり弾きやすいギターになり12F上の弦高も下がります。フレットはステンレスフレットであまり減らないので1フレットを削ることに躊躇がいりませんね。このぎりぎりの調整をしてからサドルの高さの調整をします。少し高いですがこのナット用溝ヤスリは必須です。買えば後々重宝しますよ。

作り直した牛骨ナット

UO-CHIKYU 魚地球印 ナットファイル ナット溝用ヤスリ アコースティックギター弦用6本セット(.012-.053) 【日本製】 (0.012”-0.053”)

サドルの弦間ピッチ調整
ブリッジにはサドルと弦の張力をつけるためガイド溝が彫られていました。

購入時の状態

この溝をいったん色つき木工用エポキシパテで埋め、乾燥したら別に掘り直します。弦間を50㎜から55㎜に拡張するためにはガイド溝をすこし大きめに掘り直す必要があります。ここを間違うと弦が指板の端のぎりぎりになりすぎて弦落ちする状態になりますので慎重に設定します。55mmを確保しましたが、弦落ちしないように慎重に弾くようにしないと。FG180のサドルは一般のギターよりも約83mmと長いです。未だに純正も売られていますが、今回は牛骨を選びました。
調整後ブリッジピン穴を変える事無くピッチの変更に成功

建築の友 かくれん棒 ねんどパテ ダークオーク エポキシタイプ AP-01

表板のリフィニッシュ
このギターは表板がピックによる傷でボロボロでした。ここまでかき鳴らすとなると音がよっぽど気に入っていたのでしょう。外れ個体がこんなに使われるとは思いませんので音に期待です。しかしあまりにも酷いのでリフィニッシュを試みることにしました。

表板の傷
素人が躊躇するリペアの一つはネックリセットですが、もう一つはギターの塗装です。塗装を行うにはエアーコンプレッサーやスプレーガン、塗装部屋に防毒マスク、用途に応じた様々な塗料など一般家庭では手に負えない準備が必要になりますが、そこまでいかずとも素人にもできる塗装方法としてオイルフィニッシュという方法があります。木材を丁寧にヤスリがけし専用オイルを塗布して終わり、という簡単な方法で傷はつきやすいがよりナチュラルな見た目と音を楽しむことができるという。ただし傷はつきやすいし汚れやすいし、鏡面仕上げはなくサテン仕上げとなり、保護や見た目の点での欠点もあるようです。

Xoticのオイルジェルによる方法
XOTIC/XP-OG1というオイルが使いやすいというのを見つけました。

XOTIC/XP-OG1(Xotic Oil Gel:60ml)【エキゾチック】

Webではエレキギターの仕上げによく使われているようですが、レビューを見るとアコギに使用している人もいるようです。オイル自体が固まり保護膜を作ってくれるようで重ね塗りすることによってラッカー塗装のような艶出しもできるらしいです。これだと素人にも扱えるのではと期待を持ちます。手順的には剥離剤で表面の塗装をはがす→表板をやすりで均す→オイルジェルを重ね塗りする、という感じでしょうか。

現在の塗装を剥離剤で剥がす
ホームセンターで剥離剤が売っていましたので早速使ってみました。表面に剥離剤を塗って5分ほどしてスクレイバーを使うとぽろぽろと取れます。剥離剤はかなり石油臭いので少し換気に気を付けた方がいいかもしれません。

思ったより簡単に剥がれました
表板を紙やすりで均します。イメージとしてはつるつるに、というつもりでしたが表板がボロボロで凹凸があり、そこにヤスリを掛けると毛羽立つという最悪の状態。凹にしみ込んだ汚れが取れません。全くイメージ通りに行きませんでした。とりあえず着色剤のサステインを塗ってからオイルジェルを塗ってみました。

オイルジェル
古いTシャツなどの布にしみ込ませて薄く塗ると良いそうです。乾きが早く4時間後には再び作業に取り掛かれます。色がつくこともなくクリアです。使用した布もすぐに固まってパリパリになります。このオイルは固まるようなので凹の部分に多めにオイルを塗り埋めるようにしてみましたが、固まって良い具合に埋まりました。このオイルは傷のリタッチにも使えそうです。これは扱いやすくていいですね。ラッカー塗料のように家じゅうを支配するような酷いにおいもなく、割と落ち着いたナチュラルな感じでこれなら耐えられます。

イメージと異なりリフィニッシュは失敗
最初の表板のサンディングが上手くいかず、サステインをきれいに塗ることができなかったのが結果に響きました。
リフィニッシュは失敗
表板の状態が悪く毛羽立ったところが修正できずヤスリで均すことができなかったのが原因です。順序的に凹凸をなくしてから着色しなければならなかったですね。しかしすでにこの板は傷みがひどくて均一な板の色を出すのは難しい状態にあったので元々リフィニッシュが無理だったのかもしれません。見た目は酷いですが、表面はオイルジェルを塗って割と凹凸が少なくなりました。

表面を絵の具で塗る
汚い表面のままでは使う気も起きませんので下地が見えないように別の色で上塗りしてしまう事を考えました。しかし、オイルジェルがすでに固まってしまっていますのでこの上にはアクリル絵の具は載りません。そこで調べるとクサカベという会社が出しているアキーラという絵の具が油の上に載ることがわかりました。早速取り寄せて塗ってみます。

クサカベ(KUSAKABE) アクリルガッシュ アキーラガッシュ カーマイン A-11 11ml(4号)

本来ならばパレットにのせて混ぜてから使用すべきところですが、チューブから直接筆にとって塗ったため色むらが出てしまいました(汗)どっちにしろスプレーで吹かなければ色むらなしに塗るのは難しいはずです。まあ、結果としては味わいのある?芸術的な感じになりました。このアキーラガッシュ、すぐに乾きますが完全に固まるまで何日もかかりますのでその間に修正ができるという優れた絵の具です。その後オイルとヤスリがけを繰り返して最後にコンパウンドで磨きますと表面が輝くようになりました。まあ、オリジナル性はなくなったものの個性的で中々いいですね。
味わいがあるような気がします(笑)

弦を張ってフレットの高さを最終調整する
弦を張り実際に弾いてビビリや音詰まりがないかを確認します。このギターはネックがやや逆ぞりだったのでロッドは全く緩めたままでしたが、弦高を低くするため少し回しました。逆ぞりのままフレット調整しました。
ヤマハ用のレンチがあるんですね
高いところはフレットを打ったり、金属用のヤスリで高いところ削ったりします。無くなったらフレットと指板を磨いてオイルジェルを塗って仕上げました。

剥がしたピックガードを貼り直す
ピックガードは張らずにおこうかと思いましたが、この形のピックガードはヤマハギターのアイデンティティでもあるので裏面の接着剤を取り除き表面も清掃して張り直すことにしました。表面の汚れがひどかったのでコンパウンドを使ってきれいにしました。
両面シートは強力でした

【3M】300LSE 9495LE 超強力両面テープシート (294×147mm)×2シート 多用途 強力粘着


ひとまず完成
自分がプロに依頼した結果という観点から見れば、塗装や傷のリペアなど妥協している部分があり、クレームは避けられません(笑)「とりあえず人前で使っていい状態になった」というレベルかなと思います。まあ色を表板に塗り始めたときからこのギターはすでに「アート」になってしまっているのですが。次はデュアルピックアップシステムの取付けに入ります。

完成しました!






【関連記事】

0 件のコメント :

コメントを投稿

にほんブログ村

PVアクセスランキング にほんブログ村