素人DIYのアコギいじりはフレット交換へ
中古ギターのフレットが低いのを感じる
先日手に入れたギターを弾いているうちにプレーン弦の音づまりやビビリが気になり始めました。原因はフレットが低すぎたり、フレットの頂点がすり減って無くなり平らになってしまっている事のようです。アコギを弾くなら避けられない問題で、放っておくと音がますます悪くなり、そしてそれに自分の耳が「こんなもん」と慣れてしまう事がさらに問題になります。しかしプロにこの問題解決をお願いすると5万近くかかり躊躇してしまいます。ギターも他にあることだしこの際思い切って自分でフレットを交換してみようと思いました。
ネット上ではフレット交換を自分でやっている人もいる
ネットでDIYでフレット交換をやっている人の情報を調べたところ、できないこともないが難しい、できればプロに任せたほうが良い、というのが一般的な意見でした。また多くの情報がネックを取り外すことのできるエレキギターのものであり、アコースティックギターのフレット交換の情報はあまりありません。
なぜフレット交換は難しいのか
○フレット打ち込みが難しい
フレットを打ってもきちんと入ってくれず浮いてしまう、という意見を見ました。
○フレットすり合わせが難しい
フレットはすべて同じ高さなのに打ってみると高さが揃わず凸凹しています。これを均一にしなければならないのですが、ミリ以下の作業でこれが中々うまくいかず、プロでも時間を要する作業のようです。
○ナット・ブリッジの作り直しを必要とする
フレットの高さが変わるのでそれに応じてナット・ブリッジを作り直さなければなりません。これはしっかりした知識と経験、そして専用工具がなければ難しい作業です。
○専用工具を多く必要とする
フレット抜きやプラスチックハンマー、溝切りノコ、フレット曲げ工具、フレットレベラーフレットファイルなど見たことのない工具が色々と出てきます。全部揃えていたら結構な金額になってしまいます。
難易度高いステンレスフレットへの交換に挑戦
ただステンレスフレットは硬くて言うこと聞かないので作業しにくいとか、音が変わってしまうので気に入らないことがあるとか言われています。
挑戦してみた結果はどうだったか
今回専用工具は最低限にして費用を抑えつつ、まずは失敗を覚悟で経験してみようとこの度挑戦してみましたが、結果としてはプロのように完璧には出来ないが、案外上手く行き結果は挑戦しがいがありました。やればやるほどコツをつかんで上達しそうなので複数ギターを持っている人は安ギター→高級ギターを目指してやってみてはいかがかと思いました。ただし自己責任で作業には怪我をしないよう十分注意をもって行っていただければと思います。
実際に行ったフレット交換の作業
フレットを抜く
フレットを抜く専用工具というものがありますが、値段が高く、ステンレスフレット対応となると更に高めです。そこで比較的安い喰切という工具を使います。喰切の中にはフレットと指板に刃が入り込めるような物もありました。
KingTTC 喰切ニッパー(エンドニッパー) 210mm EN-210
評価コメントではフレットが抜けると書かれてありますが、実際の作業ではフレットに食い込むのが難しい所もあり、単独ではうまくいきませんでした。他のサイトではグラインダーや砥石で刃を削って薄くするなど加工しているものも見かけます。私は百均に売っているニッパをつかいフレットの端っこをつかんでテコの要領で軽く浮かし隙間が出来たところを喰切を入れて少しずつ横に動かして外しました。これは力もいらず簡単な作業です。
食切りでフレットを抜く |
フレット浮かしは百均ニッパで |
フレットを抜く際フレットと指板を接着剤で固定していたりフレットに抜け防止の返しがあるので、溝付近の指板の木材がささくれたり剥がれたりします。剥がれを最小限にするため喰切で上に引っこ抜くのはしないようにと一般に注意されています。しかしどんなに注意してもおそらくささくれや剥がれは発生するものと思います。今回抜いた後の指板ですが、指板にあらかじめオイルを塗って作業したにもかかわらずパッと見ボロボロな感じです。
フレットを抜いた後はボロボロ |
指板をきれいにする
紙やすりで軽く指板を均し(ならし)ます。ネットでは指板のカーブに合わせたレベラーが売っていますが、ネットには便利なツールがあり、これ(リンク切れになる可能性あり)を印刷して段ボールなどの厚紙に張り指板のアールを調べることができます。アール(ラジアス)を調べたところこのギターのヘッドからボディへカーブのアールが緩やかに変わっているいわゆる「コンパウンドラジアス」である事がわかりました。機械では出来ない専門の技術者の為せる技なんでしょう。
これで指板のアールを調べます |
この指板にレベラーを使うと元の指板のアール大きく変わってしまうため、今回はレベラーを使いませんでした。ヘッドからボディに上下に動かし、軽く均した程度です。最終的にはフレットを打ち込んで修正するので気にしませんでした。ささくれたところや欠けたところは瞬間接着剤を流し込んで乾いたらヤスリを掛けます。ヤスリの木くずも混ぜるとほとんど欠けた状態がわからないようにきれいになります。
ネックの反りを修正する
弦を取り除くとアコギの多くはネックが反動で逆反りになるのでは無いかと思います。トラスロッドを六角レンチで回してネックの中央に長い定規をあててネックがまっすぐになるようにします。専用レンチがなければホームセンターにいってそれらしいものが束になっているのでその中のどれかが合うかと思います。ギターによって専用工具が必要な場合がありますので事前に確認が必要です。
ネックのそりを調べます |
溝を掃除する
カッターや掃除機を使い溝に残っているくずを取り除きます。フレットの食込み部の長さと溝の深さに問題がないかを確認します。このギターの予め掘られている溝は十分な深さがあり今回は専用ノコを使ったりすることはありませんでした。溝は普通のノコギリが入らない幅が狭いものですので溝の深さが足りない場合は専用ノコが必要です。
溝掃除 |
フレットを打つ
フレットを打つ作業は大きな音が出ます。階上の作業でしたら階下に響きます。夜は周囲に迷惑になると思いますのでお昼の明るいうちに作業することをおすすめします。
ギターのネックの下にもらって来たツーバイフォーの木材の切れ端の上に厚みのある布を敷き、ギターのネックを置いてフレットを打ちます。今回はHOSCOのステンレスフレットを使いました。このギターにはバインディングがあり、フレットの食込み部の端を落とす大変手間のかかる作業を行う必要がありましたが、この製品は最初から端っこが落としてあり、そのまま打つだけと作業が楽になりました。
使用したステンレスフレット |
HOSCO ステンレスフレット ミディアムクラウン 24本入 タングカット仕様 HFS-M1-P24
打つのに使用したのは百均で売っているプラスチックハンマーと金槌です。プラスチックハンマーをフレットの上に載せ金槌で反対側を叩いて押し込むことにします。
百均で購入 |
とりあえず買ってきたものをそのまま打ってみましたが、言われたとおりにフレットは入らず確かに言うことを聞きません。また端っこが浮いた状態になってしまいどうにもなりません。アコギの指板の端っこは仕上げでよりきついアールがかかっているんですね。
フレットを加工する
フレットの端っこを2つのペンチで持ち軽く力をいれると固いと言われるステンレスフレットも曲がります。そしてさらにフレットの端っこをペンチでつまみより強く角度をつけます。このように加工してフレットの端っこを溝に合わせて持ち、中央にプラスチックハンマーを載せて金槌で叩くとすんなり入ってくれました。
ペンチでフレットにアールをつけます |
端っこは軽く曲げておきます |
プラハンの背を金づちで叩きます |
トラブル発生!
14フレット以降の指板が狭いところはフレットが中々奥まで入りません。指板の横の圧力の強さのせいなのか、アールがきちんと合ってないせいなのか、このギターだけにみられる特性のせいなのか完全に嵌まりませんでした。僅かに紙が入るくらいの隙間ができてしまいましたが・・・まあここは指が届かないところだしね(汗)ほかサイトを見ているとクランプで圧着させたとか書かれてあるものありました。トラスロッドで逆反りにして横の圧力を弱くして打ったら良かったのか、最初に打ったほうが良かったのか・・・次回の課題となりました。
フレットの端の処理
喰切でフレットの端をカットします。ステンレスフレットだから固いのだろうと思っていましたが、案外簡単に切れました。あとはヤスリがけして端っこを滑らかにします。フレットファイルという専用工具もあるのですが、私はミニルーターを使って丸く仕上げました。ホムセンの小さなダイヤモンドヤスリでも十分かと思います。ステンレスフレットは硬くて作業しにくいと書かれてありましたが、総じてそれほどでもなかったです。HOSCOのステンレスフレットが柔らかかったのでしょうか。
フレットすり合わせ
クレジットカードなどのサイズのカードを使ってフレットの高さの凸凹を調べます。隣接する3点のフレットがガタガタしていなければOKで全箇所をくまなく調べ高いところにヤスリを当てて均します。エレキギターの作業ではここにかなりの時間を割いているようですが、しかしアコギの場合は弦を張ってみないとわからない部分があるので程々にしました。
フレットに瞬間接着剤を流し込む
フレットは返しがついていても絶えず指板の圧力を受けているのでちょっとした衝撃でフレットが浮き出す可能性を持っています。それを防ぐためにセリアの瞬間接着剤を指板とフレットの間に全部に流し込みました。少しの浮きが合ったとしてもしっかり固定されていれば問題ないと判断しました。この瞬間接着剤はプロも作業で使用する程評価が高いです。隙間に染み込んでしっかりと接着してくれます。気に入らないところがあって一本抜いてやり直したのですが、瞬間接着剤がしっかり効いていて抜くのが大変でした。
極細ノズルが便利です! |
ナットとサドルの作成
ナットについてはナットファイルというギター弦の太さに合わせたヤスリの特殊な工具なくして作成できません。またこの工具は値段が高いので今回は見合わせて既製品を利用しました。このギターは標準的なナット幅43mmで、すでに溝を切ってくれているナットがネットで手に入ります。サドルについても一般的なオクターブ調整をしたサドルがありますのでそれを利用して高さをヤスリで底面をだしながら合わせます。
既製品のナットとブリッジピン |
UO-CHIKYU 魚地球印 ナットファイル ナット溝用ヤスリ アコースティックギター弦用6本セット(.012-.053) 【日本製】 (0.012”-0.053”)
弦高とナットとサドル調整
どれくらいがちょうどいいのかについてはネット上でAyersギターさんが数値を公開してくれています。トラスロッドを回してネック調整もしなければなりませんが、それについてもここで知ることが出来ます。1Fと14Fを押さえて7F上のフレットと弦が2mm程度、つまり郵便ハガキが挟まる程度の順反り、6弦1Fに0.6mmの厚さのピックが挟まる程度の高さにナット高さを調整しました。12F上の6弦とフレット間が2.5mm程度にサドルを調整しました。既製品とギターを合わせるとほんの少し1・2弦の溝が高いのでアマゾンに売っていた調整工具を使って調整します。
ナットの弦高を調整します |
ナットは両面テープで仮止めします。
ギター弦を張ってビビリ・音づまりを解消する
アコギにはボディとネック角がついているので前の工程でフレットを均していてもネックが曲がりだす12F~14Fのフレットが高くなるだろうという予測はついていましたが、やはりその通りでその場所でビビリや音づまりが全弦に渡り発生しました。その場所をチェックしてフレットのすり合わせをします。ヤスリを掛けては弦を張り、音出しをしてビビリがないように調整を繰り返します。全部のフレットをチェックして問題がないようにヤスリを掛けます。ギター弦をつけたり外したりを繰り返しますので弦が何度も切れます。使い古しのギター弦があればたくさん準備しておくことをお勧めします。
指板・フレットをクリーニングし最終仕上げ
弦は全部外し、ナットは瞬間接着剤で軽く固定、サドルは磨いて見た目を良くします。フレット調整でヤスリを掛けて平らになったところは小さなヤスリで整形して頂点がでるようにします。傷が入った指板とフレットは百均で購入した耐水紙やすりで番手を上げながら滑らかになるまで水研ぎして仕上げます。凹んだ部分や傷はだいたい瞬間接着剤で補修できるし最終的にここで殆どの傷はなくなるのでヤスリのたびに毎回マスキングテープで養生する必要もないなぁと感じました。百均の小さなダイヤモンドヤスリも使用しましたが研磨力が今一つでもっと良いものがいいと思いますが、全体の磨きには番手の小さい爪ファイルが大変便利でした。指板もあまり痛めることもなく指板・フレットの磨きに役立ちました。
打ち込んだフレットがしっかり固定されているのかどうか、様子を見る必要がありますのでこの作業は1日仕上げという訳にはいかない作業だなと思いました。
使ったヤスリ達 |
作業完了 |
フレット交換作業をやってみて

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