アコースティックギター製作記録 #01 ─ 市販キットからのスタート

 これまで様々なギターの改良を重ねてきましたが、ある時「自分で一からアコースティックギターを作ることはできないだろうか」と考えるようになりました。

本記事では、そのスタート地点を振り返りつつ、今後の記録の第一歩としてまとめておきたいと思います。


製作キットの検討

製作を始めるにあたり、まずは市販されている自作用キットを比較しました。

  • 海外ブランド製のキット … 品質は高いものの、価格も相応に高額。

  • 国内メーカー製のキット … 入手しやすく価格も現実的。ただし仕上げや精度の点で改良の余地がある。

  • 海外通販で流通している低価格キット … 造りが粗く、仕上がりにリスクがある。

検討の結果、市販キットをベースにしつつ、自分なりに改良を加えて仕上げる という方針を立てました。目指すのはMartinD-18のレプリカです。


参考にした文献

取り組むにあたって参考にしたのが、
『はじめてのアコースティック・ギター作り〜キットで始めて構造も学べる!』

この本では、プロのルシアーの指導のもと、キット製作を通じてギターの構造を理解していく流れが紹介されています。

内容としては、

  • トップのみ単板に置き換える

  • サウンドホールにロゼッタを入れる

  • バインディングを施す

  • シェラックでの塗装

といった工程が解説されており、道具や作業の工夫など実践的なヒントが多く掲載されていました。

ただし、読み進めるといくつかの工程は「さらっと」書かれている印象もありました。
例えば、トップ板のはぎ合わせやロゼッタの加工、バインディング溝の掘削などは、実際には専用の治具や高度な技術が必要で、プロに任せたのではと思われる部分もあります。
ここは実際に調べたり工夫したりしながら補う必要があると感じました。


キットを取り寄せてみて

市販キットを実際に取り寄せ、検分してみました。

  • トップ板:合板で質感が良くなく、タップしても響きがない → 単板への置き換えが望ましい

  • ロゼッタ:転写デカール式 → 改良したい要素

  • 指板:幅が約42mmと狭く、ネックとのバランスが不自然

  • フレット位置:参考書の寸法と2mm程度のズレあり → このままでは正確な音程が出ない

  • ヘッドブロックのアリ溝:センターからズレている

そのまま作れば「とりあえず形になったギター」にはなるかもしれませんが、納得できる楽器に仕上げるには改良が不可欠だと感じました。


工具と作業環境

製作を進めるうえで「必須」と思われる工具を整理すると次の通りです。

  • トリマー、ジグソー、ドリル

  • サンダー、作業台

  • ノミ、かんな

  • F型クランプ、洗濯ばさみ(仮押さえ用)

  • サイクロン集塵機(掃除機改造)

  • シックネスゲージ(板厚計測用)

特に注意が必要なのは 騒音と木くずの処理 です。
トリマーは非常に音が大きく、イヤーマフで耳を保護する必要があります。また、木くずは通常の掃除機ではすぐに詰まるため、サイクロン集塵機を自作するのが実用的でした。ペール缶にサイクロン分別機をとりつけて掃除機と各機材にホースでつなぎます。かんなくずはすぐに詰まるのでほうきを使った方がいいかと思いました。

さらに、ジグソーはそのままでは思う様には使えません。合板に穴をあけて裏付けして治具を作ると板の切り出しなどに使えるようになります。これも割と騒音です。使う時間とイヤーマフがいります。


板厚調整という大きな壁

ギター用の板材を扱う「大和マーク」さんからトップ材を購入すると、厚さは約5mmで届きます。
実際に必要なのは3mm程度のため、2mm削る作業が必須 です。

プロであればプレーナーで一気に仕上げますが、これは高価で騒音も大きく、個人ではハードルが高い機材。
今回は知り合いのギター作家にお願いして薄くしてもらいましたが、購入時に「4mm程度に仕上げてもらえるか」確認した方が現実的だと感じました。また高価なプレーナーの代わりに平面だしのトリマー治具を自作するか騒音が少ないドラムサンダーを自作する方向性も検討した方がいいと思います。

また、板厚を測るためのシックネスゲージも重要です。ノギスでは奥の厚みが測れないため、専用ゲージが必要になります。板厚はセンターと端で厚さを変えた方が良いらしくサンダーをかけて板厚を調整する際に差し込んですぐに板厚と場所を把握したいです。
幸い、海外通販で安価に入るパーツを使って、自作のゲージを端材で組み立てることも可能でした。頼りない見た目ですが使ってみると役に立ちます。

端材でつくったシックネスゲージ これでも役に立つ

板のはぎ合わせ

ブックマッチという二つの板を隙間なく合わせる技術が必要らしく私の技量ではどう考えてもピッタリ合わせるのは無理です。いろいろ試してみた結果直線の出ている棒にサンドペーパーを貼り付けて合わせる部分を研磨するという方法をとりました。今回は購入したスプルースの板のはぎ合わせをします。
接合部分を正確に出す
ホームセンターで鉄の角棒を購入し、一面に80番のペーパーを両面テープで止めて二つの板と合わせます。棒の反対側には研磨の際に傾きが出ないようガイドの板をクランプし二つのクランプされた板の間をペーパーを張り付けた角棒が真直ぐに動くという仕組みです。自分では不可能と思っていたことが簡単にできました。

ゴムひもで縛って合わせる
タイトボンドを両面につけて合わせ、合板の上に載せてゴムひもでグルグル巻きにして間に厚みのある端材を何本か挟み込みゴムひもにテンションをかけ、同時に板の接合部が浮かないように抑えにします。接着部分にはキッチンペーパーで接着剤が他につかないように養生します。ゴムひもは網戸修理用が百均で一本7mで売られてますよ。


今後について

こうして振り返ってみると、アコースティックギター製作は決して簡単ではなく、道具や環境、技術の一つひとつに工夫と学びが必要です。
ただ、その過程こそが面白く、また製作の可能性を広げてくれるものだと感じています。

次回以降も、改良や作業工程を記録しながらまとめていく予定です。

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