20年モノのアコギが蘇る!ランダムサンダー×オイルジェルで極上仕上げ

 今回は、長年使ってきたアコースティックギターの表板を再塗装した様子を紹介します。Amazonで見つけたランダムサンダーと、Xoticのオイルジェルを使って挑戦したのですが、思った以上にうまくいきました。

新品レベルとはいかないものの自分で傷を治してきれいにしたいとギターのリフィニッシュを考えている方にとって、参考になるよう作業の流れや注意点も詳しく紹介します。まあこれを読んで実行する人はほとんどいないと思いますが(笑)作業はご自身の責任で行ってくださるようにお願いします。

再塗装のきっかけ

お気に入りのアコギには長年の使用によって細かい傷が増え、見た目が気になるようになってきました。そんなとき、Amazonで評価の高い格安ランダムサンダーを見つけ、「これがあればきれいに再塗装できるのでは?」と思い立ったのがきっかけです。

また、以前手作業で紙やすりを使って表板の塗装を落とした経験があるのですが、そのときは4時間近くかかり、途方に暮れ(笑)体力的にも精神的にも大変でした。「次回やるなら絶対に機械が必要だ」と思ったその教訓も、今回の行動につながっています。

前回の大変な手作業の様子

今回使用したギターは手工製のギターですでに20年は経っています。写真の通り狭い部屋で練習してあちこちぶつけたりしたこともあって表板は傷がたくさんついてしまっています。傷は貫禄を表す、ような考えもありましたが今はギターはきれいに越したことはないと今更考え直して今回の運びとなりました。

傷があちこちに入ってます・・・

サンディングシーラーについての考察

前回苦労したもう一つの原因が、塗装下地のサンディングシーラーです。これは木地の凸凹を埋めて仕上がりをきれいにするためのものですが、思ったより分厚く塗装されて非常に落としにくく時間がかかりました。

塗装の断面をざっくりと

マーティンなどの量産型アコギでも、平滑性と見た目を重視してサンディングシーラーをたっぷり使い、ラッカーで鏡面仕上げをする工程があると思われますが、その結果、保護膜としては良いのかもしれませんが本来の音が塗装に埋もれてしまっている可能性もあるのではと思います。シーラーは触れてみるとラップやゴムみたいな質感で、これでギターを覆っているなら出音は鈍化するイメージが感じられます。

ラップでぐるぐる巻き

実際、以前Martin OOO-28ECをリフィニッシュした際、リフィニッシュ前、塗装除去後、再塗装後の音響特性を比較したことがあります。その結果、リフィニッシュすることで音のレンジが広がり、特に高域の倍音が増えたことが確認できました。

一方で、高級な手工ギターではこうした工程を避け、木地に直接シェラックをタンポ塗布する方法が取られています。これは非常に手間のかかる工程ですが、木の響きを最大限に活かせる方法でもあります。下の動画は最も小さい音からこれ以上大きくならない限界まで到達するに何回ピッキングできるかという比較で
工場製・・・約10回~11回
手工製・・・約15回~16回
くらいの違いとなり、これが表現力の差がでるという話です。私もやってみたら手工製ギターとMartinも全く同じ結果でした。これは塗装の違いなのかなと思いました。


使用した道具・材料

  • ランダムサンダー(Amazonで購入

  • 紙やすり:#80 → #240 → #400 → #600 → #800 → #1000 → #2000

  • エポキシ接着剤(穴埋め用/百均)

  • 古着のTシャツ(オイル塗布用)

  • Xotic Oil Gel(塗装仕上げ)

  • 換気の良い作業環境

このサンダーは回転数を変更することができます。塗装を剥がすときは3、仕上げ磨きには1で使用しました。スピードの調整ができるので非常に扱いやすくポリッシャーとして使えます。このランダムサンダーは回転と振動で音が出ます。集合住宅だと昼間での使用でスピードが最も低速でなんとか許してもらえる程度かなと思います。使用場所と時間は注意が必要です。

今回使用したサンダー

実際の作業工程

1. 旧塗装の除去と木地出し

ランダムサンダーに80番のペーパーを取り付けて塗装を削り、白木が見えるまで削ります。続いて240番で全体をならし、フラットに仕上げていきます。

サンディングは研磨された細かい粒子が飛びますので、飛んでも良い環境にしておく必要があります。また、目を保護するためにゴーグルや眼鏡、マスクの着用は必須です。機械は回転しますので、くれぐれも作業には十分注意してください。

一度に広い面を削れるサンダーの威力は抜群で、元々このギターはシーラー不使用で木地を均一に整えるのが非常に楽でした。

40分ほどでサンディング終了

2. オイルジェルの“試し塗り”で状態確認と補修

Xotic Oil Gelを軽く1~2回塗ってみると、研磨だけでは気づかなかった凹凸や小傷、穴が浮かび上がってきます。これらをエポキシ接着剤で補填し、硬化後に240番で平面に仕上げ、さらに400番で滑らかに仕上げました。普通の紙やすりでもいいのですが、ディスクペーパーでサンディングする際は回転の初めで板と接触する際に傷になりやすいのでゆっくり接触させます。

3. 表面の仕上げ研磨

さらに600番→800番→1000番→2000番と番手を上げて研磨。これにより木肌が均一になり、自然な艶が出る準備が整います。

4. オイルジェルの本塗装と仕上げ

古着のTシャツ生地にオイルジェルを取り、木地にしっかりと塗り込むようにして丁寧に塗布します。フラットな木地ができていれば、3回目の塗布あたりから非常にきれいな塗面になってきます。その後は600~800番で軽く均しながら仕上げていきました。

オイルジェルは表板だけでなく、ブリッジや指板にも使用可能です。特に黒檀を使用している場合、オイルジェルで深みのある美しい光沢が出て、高級感が増します。

今回は仕上げとして、サンドディスクによる研磨は傷が残りやすいので使わず、コンパウンドと羊毛を使ったバフでポリッシュを行いました。サンダーのスピードを下げればポリッシャーとしても使えるので、仕上がりが格段に良くグロス仕上げとなりました。

傷がなくなり気分が上がります

次の挑戦へ

手工製ギターがうまく行きましたので、前回行った前述のOOO-28ECを再びリフィニッシュすることにしました。前回は手作業で仕上がりがもう一つでしたが、今回はサンダーできれいに仕上げます。またバック板は導管が多くてオイルジェルだけでは仕上げが難しいため、一般のシーラーを使わず、シェラックをシーラーとして使用します。12グラムの社ラックフレークをジャムの空ビンに入れに100ccの無水アルコールを入れて溶かします。

シェラックフレークを無水アルコールで溶かし準備
シェラックをシーラーとして使う時にはブロンズクラスの色味がないフレークがいいようです。私は間違って黄色のシェラックを購入したためこれを塗ったところビンテージの色味になってしまいました。私はクリア塗装が好みなので今回シェラックは裏板用にしました。

シーラーなしで仕上げるため再びサンダーで塗装を剥がしました。今回も徹底的に木地をフラットにしてオイルを塗りました。穴埋めはエポキシ接着剤を使用しました。塗り重ねは約12回、前回よりフラットでグロス仕上げとなりました。
磨き前でもつやが出ていい感じです

裏面塗装はオイルジェルでは難しい

以前何度かオイルジェルだけで裏面の塗装を試みましたが、オイルが導管に吸われて塗膜が形成しにくいため、今回はシェラックをシーラーとして使ってみましたが、トップコートをオイルジェルで仕上げようとしてもムラができてうまく行きません。

結局、シェラックでトップコートも仕上げることにしました。シェラックはすぐに乾くので均一に塗り広げるのが難しく布を丸めてタンポを作り、塗り付けるように薄く塗り、乾いたらコンパウンドの荒目で研磨を繰り返しました。それでも導管の多い箇所は吸われてうまく行かないので上から軽くたたくようにして塗装を広げシェラックを定着させました。
裏面の仕上げはこんな感じ
シェラックはすぐ乾いて早めに作業ができ、塗装に深みが出て鏡面仕上げができるのでいいですね。あれだけ難しいと感じた裏面塗装が鏡面で仕上がりました。これだと次回は表板もシェラックを使ってみようかなと思います。素人でもコツをつかめばきれいに出来そうです。

感想とまとめ

店頭に置かれているような鏡面仕上げとはいかないものの、今回思ったより簡単にリフィニッシュができました。オイルジェルは4時間ごとに塗り重ねが可能で、想像以上に作業がスムーズでした。過去の傷も修復され、見た目もきれいに。

表板の仕上がり この後ピックガードを取り付けます

完成しました OOOはデザインがいいね~

注意点としては塗り重ねの際に、毎回表面の傷は修正しておかないと表面はきれいでも中に傷が残ります。また塗膜は形成されますが厚みが薄いため傷は付きやすいです。しかし、このサンダーがあれば、シーラーがないので再び傷がついてもヤスリで除去して塗り重ねるとすぐにリペアできるという安心感がありますね。

【追記】
今回は表オイルジェル裏シェラックで仕上げましたが、両面オイルジェル仕上げより明らかに出音の音量が上がり爆音ギターになりました。上記の動画の最小から最大まで何回ピック出来るかというのをやってみましたが、14回~15回くらいは行くようになりました。
過去に鳴らなかったこのギターの問題点はメーカーがシーラーをたっぷり塗りたくって仕上げた裏面にあったのでしょう。ほぼこれで確定だと思います。

また前回仕上げた両面オイルジェルはとに裏面が少し柔すぎてエネルギーが抜けてスポイルされたところがあったのかもしれません。裏板は前に音を反射させるようにほんの少し堅めの方が良いのかなと考えます。薄くて堅い塗面で仕上がるシェラック塗装はやはりアコギにとって最高の塗装なのでしょうか。

今回はタイトルの通りオイルジェルの記事でしたがシェラックの塗装の仕上がりの美しさを見ると次回やるならシェラック塗装にしようと思います。


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