手持ちのアコギをカッタウェイにする話

 アコースティックギターはローポジション(1~5フレット付近)での演奏が中心になりがちですが、アレンジやソロギターのスタイルによっては、12フレット以降のハイポジションを使いたくなる場面も多くなってきます。

そうなるとカッタウェイ仕様のギターが便利ですが、これまで愛用してきた古いギターにも、**簡易的な方法でカッタウェイ機能を持たせられないか?**と考え、実験的にベベルカッタウェイ(正しくはベベルドカッタウェイだと思いますが)を作ってみることにしました。


カッタウェイとベベルの違い

カッタウェイには「フローレンタイン」「ベネチアン」といった種類がありますが、いずれもボディ容量が減るため、音の響きがややスッキリする傾向があります。

そこで今回は、ボディの一部をカットし、ベベル(斜めに削った面)を追加するだけで、ハイポジションへのアクセス性を改善する方法にチャレンジ。
これならボディの容積減少を最小限に抑えられ、音への影響もごくわずかで済むのではと考えました。


使用ギターと今回の目標

今回使ったのは、F.Hashimoto FH-35というドレッドノートタイプのアコースティックギター。

F.Hashimoto FH-35

このギターは、もともと中古で“ジャンク品”として購入したもので、以来、ボディ・表板穴あき修理、塗装のやり直し、全フレット交換、サウンドボードの自作、自作ピックアップの取付け、表板のスクラッチ加工など、修理や改良の練習台として活用してきました。

このギターを通じて得た経験は、後に高級ギターの修理にも活かされることになります

今回はこのギターを使って、できるだけシンプルかつ音の変化を抑えたベベルカッタウェイ加工に挑戦しました。


ベベルカッタウェイ加工の流れ

1. カットする範囲を決める

まずはどこをどの程度カットするかを決めます。
今回は「12フレットでセーハしてコードが押さえられる程度」を目安とし、ほんの一部だけを葉っぱ形状にカットすることにしました。大体ボディ奥行30mm程度の凹みです。


2. 台紙を使って形状を決定

きれいに切り取るために、まず葉っぱ状のガイド台紙を作成し、ギターのボディに貼り付けてから、ドリルなどで下穴を開けていきます。

どの程度カットするかを実寸で作成
大きく開きました(なんか適当すぎた💦)


3. 開いた穴に合わせた木片を作成

空いた穴の形に合わせて紙で型を取り、それを基に木材を切り出します。
今回は**2mm厚のローズウッド材(ギターワークスで購入)**を使いました。切だし方法はノコギリで大まかに切り出し、「のこやすり」で詳細を切り出します。


4. 木片を曲げてフィッティング

板はそのままでは合わないので、湿らせたうえで熱を加えて曲げ加工が必要になります。

今回は、中古ショップで300円で購入したジャンクのヘア用カールアイロンを使って曲げました。
必要なR(曲率)になるよう、事前に自作したローズウッド材の型に合わせて慎重に曲げています。思ったより曲木は簡単でした。すんなり曲がってくれます(笑) あとは開けた穴とこのパーツが出来るだけきっちりハマるようにのこやすりを使って調整するだけです。

カットしてから合うように成型


5. 接着と仕上げ

曲げた木片はタイトボンドにローズウッドを切り出すときに生じた木粉を混ぜた接着剤で固定しました。接着後はずれないように養生テープを使いました。

接着した状態

実は開けた穴に木片は完全にフィットしませんでした。予想した穴のカーブが良くなかったようです。そこでエポキシ木工パテを使い穴をふさいでいます。エポキシパテの部分は色が合いませんので後でアクリル絵の具で色を合わせます。

見た目を少しでも自然に仕上げるために、境界部分の段差にはヤスリを使って微調整
次回の練習としてパーフリング材(大和マークさんで購入)を購入して透明のエポキシや瞬間接着剤でばらけないよう白黒を軽く組合わせ、彫刻刀とミニルータで溝を掘り、カーブに合わせて組み合わせを調整して再度エポキシ剤を塗ってでパーフリングを固定します。思ったより簡単にできました。接着剤が固まったらヤスリがけと最近使用して余っているシェラックで塗装を行い仕上げます。

塗装と言っても布にシェラックを浸して塗り重ねるだけ。オレンジシェラックはビンテージ色に塗装してくれるので何もしなくても簡単に色合わせができます。乾いたらコンパウンドで磨きます。作業はパーフリングなしでも済ませられるのですが、やはりあった方が見栄えがいいですね。

なお、今回はライニング(補強材)はあえて入れていません
これは構造的に負荷が少ない箇所であり、接着面積や板のフィット感からみて十分強度が出ると判断したためです。


完成と反省

以下が完成後の様子です。

完成した様子(下の表板の痛みはスクラッチのため加工)

接写で見ると細部の仕上がりにはまだまだ課題があり、「製品レベル」というよりは**“実験レベル”としての成功**という段階です。まあ穴あけ時点から少し適当すぎました💦本来ならもっと径の小さいドリルで養生して開けた方が切り口がきれいにでき仕上がりも良かったはずです。
曲げの甘さや合わせのズレ、接着後のわずかな隙間など、次回に活かすべきポイントも多く見つかりました。次回は良い仕上げが出来そうです。

実際に弾いてみると・・・なんとちゃんと12Fのセーハができます!狙い通りです!ハイフレットの押し弦がスムーズです!このギターの出番が増えそうですね。何しろ押尾コータローさんがドレッドノートサイズのカッタウェイを愛用するように、本当はソロギターにはドレッドノートサイズのカッタウェイがいいのではと思っていますが・・・それって手に入りにくいし、正直見た目がカッコ悪い。その点このベベルカッタウェイは見た目をあまり損ねません。


まとめ

今回のベベルカッタウェイDIYは、

  • 音への影響を抑える形状でのカット

  • 市販工具を活用した木の曲げ

  • 最小限の材料と加工で実用性の向上

という点でかなりの成果が得られました。

遠目には何の問題もない(笑)

一方で、やはり加工の精度や仕上げには経験と道具が要るということも痛感。
それでも「古ギターに第二の人生を与える」という意味では非常に楽しいプロジェクトとなりました。仕上げの荒いところは少しずつ直していこうと思います。表裏板再塗装も面白いかも。このギター、きっともっといい音になるはず。

今後、より精度を高めたバージョンや別の加工にも挑戦してみたいと思います。


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