低域用コンタクトピックアップを作る
私の演奏スタイルは、パーム(手のひらでサウンドホール付近の6弦側を叩く)を多用するのですが、この奏法をライン接続し、ライブハウスなどのPAで音を出す場合、なかなか思い通りの音を得ることができませんでした。そこで今回は、低域用コンタクトピックアップを使ってその課題を改善することにしました。
背景と課題
ギターのボディを叩く音は、コンタクトピックアップや内蔵マイクで拾うのが一般的です。しかし内蔵マイクはハウリング対策として低域を抑える仕様になっているため、パーム奏法で生まれるバスドラムのような低音を拾うには不十分です。そこで、コンタクトピックアップを使うのが主流となります。
ただし、一般的なコンタクトピックアップはギター全体の音のバランスを拾うよう設置されているため、パームのような低音を十分に拾うには情報量が不足します。そのためイコライザーやコンプレッサーで低域を抽出しようとしますが、持ち上げれば音の密度が薄くなり、他の音に埋もれてしまうことになってしまいます。
解決策:低域専用のコンタクトピックアップ
そこでパーム専用のコンタクトピックアップを別途設置し、手元のミキサーで調整する方法が見られますが、専門業者に依頼し低域用ピックアップの増設をすることで実現できますが、今回は自作してみることにしました。その結果、非常に満足のいく音を得ることができました。
製作のポイント
低域専用のコンタクトピックアップを作る際、既存のコンタクトピックアップの音に重ならないよう工夫が必要です。当初、表板とピエゾ素子の間に低域のみを通す素材を挟むことを試しましたが、現実にはうまくいきませんでした。結局、全体の音を拾ってしまいます。
そこでAIに相談したところ、ローパスフィルター回路の作成を提案されました。しかも、電源不要のパッシブ回路で抵抗とコンデンサ各1つで実現できるとのこと。具体的な回路と計算式まで示され、電気回路の素人にはまさに目からウロコでした、てかAIすごいですね。
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こんな感じのイメージで |
必要な部品
- ピエゾ素子(村田製作所27mm)
- 抵抗(金属皮膜抵抗)
- コンデンサ(フィルムコンデンサ)
- 一芯の細い電線(平河 HC-2L1)
- RCAオスコネクタ
- はんだセット
- 両面テープ(CROCODILE GRIP 百均)
- 銅箔テープ
- RCA分配器
- 配線フック
- ブチルゴム
- エポキシ接着剤
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秋月電子で購入 |
今回は直径27ミリの村田製作所のピエゾ素子を使いました。ノイズを拾わないようにアース線には銅箔テープとはんだ付けします。AIの提案では、抵抗10kΩとコンデンサ0.22μFの組み合わせでカットオフ周波数が72.3Hzになるとのことですが、まずは近い値の部品を使って試作しました。
製作と調整
簡単な回路なので基板は使わず直接はんだ付けしました。実際に試してみると確かにローパスフィルターになり、ギターの他の音はほとんど聞こえません。ただし、27ミリのピエゾ素子では出力が不足していました。より大きな素子が望ましいですが、サイズが大きいと扱いにくいため、今回は断念しました。
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直接ハンダでつなぎました |
最終的には、抵抗10kΩとコンデンサ0.11μFの組み合わせで理論値ではカットオフ周波数150.2Hzのものを作成しました。これだと少し数値が高すぎますが、ピエゾに他の素材を組み合わせることでピークが100ヘルツ以下の低域寄りの音に調整でき、結果的に十分な出力と音質が得られました。
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完成しました! |
設置と音出し
完成したピックアップは直接パームの音を拾う箇所に設置しました。取り付けには、百均で購入した粘着ゲルタイプの両面テープを採用。厚めのものを使うことで音のピークオーバーを抑えました。
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百均のゲルテープ |
位相の問題が懸念されましたが、低域専用ピックアップという性質上、問題はほとんど発生しませんでした。わずかに既存ピックアップの出力が下がる程度です。
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コンタクトピックアップ同士をつなぐRCA分配器 |
課題と感想
音出しの結果、低域用ピックアップは十分な情報量を確保できましたが、パームで叩く場所が数センチ変わることで若干音の高低が発生しました。カットオフ周波数が高めなことで高い音を別に拾っている事が原因だと思います。私は足元エフェクターのイコライザで対応するため問題ありませんが、イコライザーを使わない場合は、より低域寄りの部品選定が必要だと感じました。
Ampero2 Stompによる低域調整
Ampero2を使うと外部入出力端子をパッチケーブルなどで直結しておけばパームの調整ができます。コンタクトピエゾの信号のエフェクトラインに外部へ送るSND(センド)を設置して音を分岐させRTN(リターン)の間にローパスフィルタとコンプ(Squeezer)を入れて80H以上をカットしてコンプで音整えて出力を調整します。これでコンタクトピックアップのギターの音に調整されたパームの音が加わって出力されるようになります。これにマグネットピックアップのエフェクトラインも別に使えるので迫力のある音が出せるようになります。
アンペロ2によるセッティングで動画に撮ってみました。周波数アナライザの画面からピークが70~90Hzで出ていることがわかります。もう少しコンプの調整が必要ですが実音もかなりドスドス言っていますね。
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