デュアルピックアップシステムをとる意味

 先日、アコースティックギター用のハイレベルなピックアップシステムを提案するアンフィニカスタムワークスさんがペッテリ・サリオラさん用に製作したシステムを試してもらっている動画がYouTube上に上がっていました。それを見た勝手な感想(笑)

ペッテリ・サリオラさんもその完成度にビックリしているご様子です。一曲の中でエフェクトの切替を何度も行うに当たってはそのシステムもかなり複雑になり、見ているだけで目眩がしそうな複雑なシステムです。その中でシステムを図解したところがありましたのでそこをズームしてみます。
ペッテリ・サリオラ用システム

システムの概要

アコギにマグネットとコンタクトの通常のデュアルピックアップに加えてボディヒットを演奏のスタイルに合わせて十分に音を拾うために作成されたコンタクトピックアップが3つ別に取り付けてあり、合わせて5つのピックアップの信号がシステムに送られています。シールドとプラグはは5つの信号が同時に送られるように特注で作られたもののようですね。5つの信号をそれぞれ目的に応じて加工・調整し、最終的に別に手元にあるデジタルミキサーの9つのチャンネルに送られバランスを調整してPAに送るようです。1本のギターの音にここまでやるか~!という凄さです。

三つのボディヒット用コンタクトピックアップ

ボディヒット用の3つ信号は一旦DIに送られインピーダンス変換されてそのままミキサーで調整されるようですが、3つもあるという事はギターのどの箇所でもきちんと音が拾われてるんでしょうね。パーム用のコンタクトもあるので軽く叩いてもちゃんと音を拾ってくれ、デジタルミキサーのイコライザーやコンプレッサーかリミッターで調整してキックとして使える音になりそうです。

デュアルピックアップの役割

デュアルピックアップのコンタクトとマグネットはエフェクトを通さずそのままミキサーに送ります。マグネットの信号はスプリッタで分岐してオクターブ上の音が出せるワーミーと飛び道具のEvil Filter用に、また下のオクターブ音を出し演奏の厚みを出すオクターバ―用に、そしてディストーション用と3つに分けています。それぞれのペダルをオンする事で音が出せるようにそのエフェクト専用のラインにしているようです。エフェクトのクセが強くてもエフェクトがかかっていない信号も送っているのでアコギの生音のニュアンスを残したまま別のエフェクトがかかるような恰好になります。同一ラインにエフェクターをかけると生音のニュアンスが無くなりますので聴く人に「突然楽器が変わった」という違和感を与えてしまいますが、このシステムでは「新たな音が加わってきた」というナチュラル感を与えることが出来ると思います。デジタルミキサーのリミッターやコンプレッサーでエフェクトが加わることによって音量が上がり過ぎるのを防ぐこともできますよね。

アンビエントはディレイ、デジタルミキサーで最終調整

最終的にこのシステムはリバーブの代わりにStrymonのTimelineという万能ディレイでアンビエンスをデジタルミキサー(QSC TouchMix-16)のセンドリターン機能をつかって調整してPAに送るようです。Timelineは使っている人多いですよね。各ライブ会場のPAシステムにより出音が変わってくるので全ての音はデジタルミキサーで最終調整すると思いますが、複雑になればなるほど調整が難しく事前に気が付かずちょっとしたミスも出やすいもの。ライブ直前のバランス調整が難しく、アマチュアがこのシステムを形だけ真似しても使いこなせず周りに迷惑をかけるでしょうねぇ・・・もっとも形だけ真似するだけでAmazonさんを見てもわかる通り高級ギターが買えてしまう程の予算が必要ですが。


デュアルピックアップシステムをとる意味

一般にはこんな複雑なシステムは作ったり使ったりするような事も中々ないとは思いますが少なくともデュアルピックアップによるシステムは作れますので、Tidemarkのプリズムルーター(これはもっと騒がれていい機材)とかを使えば近い事ができそうです。上記アンフィニのシステムの設定や自作のデュアルシステムを色々と試してみた結果感じる事ですが、

〇最初のピックアップの生音に近いニュアンスは残す。少なくともコンタクトピックアップの音はリバーブ・ディレイ以外のエフェクトはかけない。しかし最近のリバーブ・ディレイのエフェクターのMix機能はよく出来ており、センドリターンで必ずしも接続する必要は無いと思う。センドリターンを使わない方がよい結果になる事もある。

〇マグネットピックアップの音だけに、元音を変化させる系統のエフェクト、オクターバ―、オーバードライブ等のエフェクトをかける。ワーミーなどの飛び道具を使うには別にマグネットの分岐をする。マグネットの低域は必要に応じてイコライザでブーストし全体の音の厚みを出すのに使用する。

〇コンタクトピックアップの低域音を使ってイコライザーでパーム等のボディヒットの音を調節する。またハウリングを起こしやすいポイントもコンタクトの低域(といってもローミドル)にあるので出し過ぎないようにする。

DIYでアコースティックギターのデュアルピックアップ取付という記事でDIYで大変な思いをしてデュアルシステムを構築した意味は「後日」としていましたが、上記のように様々な音作りの選択肢が増えるという事にあります。市販のピックアップのように最初から各ピックアップの音がミックスされてしまうと必要に応じて音を選んだりする自由度がなく、各ピックアップの特性を十分に生かす事ができないのではと思います。

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